雑木林のカット       金光達太郎の「話し方ワンポイントレッスン」Y
              
              
  雑木林の音
 
  
           <潟_スキン発行」喜びのタネまき新聞」No.406-平成15年第11号より>
                          
                                          イラスト:西村玲子

<五分の魂>

 公園にいくと、ときどき、気になる立て札を目にする。
「芝生に入るな」「立入禁止」
見なれた言葉だが、なんだか命令されているみたいで、あまり愉快ではない。

 ここで思い出すのが「一寸の虫にも五分の魂」という言葉である。

 この意味は「小さい虫けらにも体の半分ほどの意地が詰まっていると思え。どんなに弱そうな人にも以外に大きな意地があるものだ。決して侮ってはいけない」ということのようだ。

 「立入禁止」を嫌がるのはこの五分の魂である。

 人と話をする時にも、この五分の魂と話すのだという意識を持ちたいものだ。
「掃除をしなさい」といわれるより「掃除をしてくれるかい?」のほうがだれでも嬉しい。

 さて、ここで先ほどの立て札と対照的な例をご紹介しよう。

 それは、鎌倉であったか定かではないが、ある名刹の庭園の奥に、小庭に通じる扉のない丸太の門があった。その門柱にかけられた木の札に、次のような言葉が墨書してあった五分の魂を守る言い方カット

 「これよりなかに
         お入りにならぬように」

 これを読みながら、私は、この穏やかな言葉が私のこころのなかで確かな働きをしているのに気がついた。「お入りにならぬように」の丁重な言葉に、私の五分の魂は素直に胸を開いた。
  そうして、「はい、おっしゃる通りにいたしましょう」と、いそいそと受け入れる気持ちになったのであった。

 この札の主の御坊は、読む人の五分の魂に対し、正面から意を通そうとしなかった。そして、敬意を持って一歩譲ることによって読む人の魂と手を握ったのであった。

 人に接する奥義を垣間見せていただいたように思えた。

たちは誰でも五分の魂を持っていて、その魂が「ナメンナヨ」と思いやすい、と先生はおっしゃいます。相手の5分の魂を踏みつけない言い方、自分の5分の魂が暴れださない受け取り方が話し方の基本なのでしょう。

フィリア WEB 話し方教室へ(金光達太郎師のワンポイントアドバイス)
T.人を好きになることの大切さ U.人間なのだ・・ V.やさしい人・・ W.小さな神様・・ X.オレサマムシ・・
Y.五分の魂 Z.ありがとさん [.ひとことの余韻 \.鳩は利口です ].本当に苦手?
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