雑木林のカット       金光達太郎の「話し方ワンポイントレッスン」W
              
              
  雑木林の音
 
  
           <潟_スキン発行」喜びのタネまき新聞」No.405-平成15年第9号より>
                          
                                          イラスト:西村玲子

「小さな神様」・・・・・

 私は波を見るのが好きだ。
太平洋を渡って押しよせるうねりが、犬吠埼の巨岩に打ち寄せて砕け散る様を、海岸にしゃがんでじっと眺める。

 やがて私は、太古の祖先たちやアイヌの人たちが感じたように、海にも岩にも神様が宿っているような気持ちになってくる。
その神様たちと私の中の小さな神様が「こんにちは、会えてよかったね」と、しばしの出会いを喜びあっているような気がしてくるから楽しい。

 ある日、私は犬吠崎をめざして鈍行列車に乗っていた。車内はガラガラで、私は4人分のボックス席ただひとり。窓側、前向きの席に座れてルンルン気分であった。列車は雑木林をぬけ、畑を渡り、ゆっくりと銚子に向かっている。

 そこまでは何ごともなかった。だがちょっと困ったことが起きた。小さな神様カット

 一人の高校生が、飲み終わったアルミ缶を手でぺコッと凹ませた。その高い音が面白かったのか、凹んでない方をまた押えた。ペコッ、ペコッ、ペコッ、ペコッ・・。

 その音は、はじめは、ただの音だった。だが、しばらくつづくうちに次第に耳についてきた。もう、やめてほしいと思えるようになってきた。

「おい、きみ、やめたまえ、うるさいよ」と、怒鳴りたかった。だが、そんなことをしたら、この子たちの折角の旅行に曇りができる。 しばらく考えてこういった。

「すまないが、私はね、その音に弱いんだ。頼むね」

 高校生の答えは爽やかだった。「すみません、気がつかなくて、どうも」
 
 高校生の小さな神様も笑ってくれたようだった。


相手が悪い、年下と思うとつい高飛車に言いやすいのですが、そう言ったとたん、自分も相手もいやな気分が残るだけではないでしょうか。相手は気がつかないだけかも知れないのです。そんな気持ちを考えてことばを出せば、相手の心にある神様と会話できるのでしょう。

フィリア WEB 話し方教室へ(金光達太郎師のワンポイントアドバイス)
T.人を好きになることの大切さ U.人間なのだ・・ V.やさしい人・・ W.小さな神様・・ X.オレサマムシ・・
Y.五分の魂 Z.ありがとさん [.ひとことの余韻 \.鳩は利口です ].本当に苦手?
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