雑木林のカット       金光達太郎の「話し方ワンポイントレッスン」]
              
              
  雑木林の音
 
  
           <潟_スキン発行」喜びのタネまき新聞」No.409-平成16年第2号より>
                          
                                          イラスト:西村玲子

<本当に苦手?>

 人は苦手なことはやりたがらぬ。それでますます苦手になる。

 私もそうだった。小学校2年生のころ、漢字の書き取りで20点をとった。そのショックから「自分は生れつき記憶力が劣っている」という強い苦手意識をつくってしまった。
それ以来、すべての暗記科目は、勉強してもムダなように思え、力が入らなくなった。そのため、記憶力は低迷をつづけ、社会に出てからも、必要なことことが普通の人のように覚えられなくて困ることが多かった。

 こんなとき、なぜか、私に次のような転機が与えられた。

 それは、私が40歳を過ぎたある秋の夕方のことであった。東京のある書店で、ふと雑木林を散歩する先生1冊の文庫本を手にとってページを開いた。オヤッ、活字が迫ってきた。

 「・・・念仏は、まことに浄土にむまるるたねにてやはんべるらん、また地獄におつべき業にてやはんべるらん、総じてもて存知せざるなり・・・」
歎異鈔(抄)との初対面であった。私はこの文章を思わず口ずさみ、美しい韻律と深い内容に魅了された。そしてこれを暗誦しながら雑木林を逍遥する自分を夢にえがいた。

 私は、翌日から通勤電車の車内で暗記をはじめた。往路の15分で覚え、復路でおさらいをした。初日に覚えられたのはわずか3行半であった。まぁ、いいじゃないか、じっくりいこう、とつづけた。
30日後、その日に覚えた行数を数えてみた。11行半、それは初日の3倍を超えていた。オヤ、私はもう苦手ではない。このとき、私はやっと今までの誤りに気がついた。

 「私の記憶力は、生れつき人並みだったのだ。それなのに愚かにも苦手だと意識して記憶を怠った。そのため、記憶に必要な神経組織が錆びついていた。その錆が30日かかってとれたのだ」

 苦手はレールの錆のようなもの、使っていれば、次第に落ちる。

■話し方も皆さん苦手意識を持っていらっしゃるかも知れませんが、どなたも錆びさえ落とせば楽に話が出来るようになります、と先生は新しい方におっしゃいます。「錆び落しは仲間と一緒に、適切な指導者にアドバイスをもらえば一層早いですよ」ということばに励まされて、私たちも上がり症を克服できました。

フィリア WEB 話し方教室へ(金光達太郎師のワンポイントアドバイス)
T.人を好きになることの大切さ U.人間なのだ・・ V.やさしい人・・ W.小さな神様・・ X.オレサマムシ・・
Y.五分の魂 Z.ありがとさん [.ひとことの余韻 \.鳩は利口です ].本当に苦手?
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